津地方裁判所 平成9年(行ウ)2号 判決 1998年6月11日
原告
松葉謙三
外一名
右原告ら訴訟代理人弁護士
村田正人
同
福井正明
被告
三重県知事
北川正恭
外一名
右被告ら訴訟代理人弁護士
倉田嚴圓
右被告三重県知事指定代理人
田米千秋
外四名
右被告三重県企業庁長指定代理人
大辻勝己
主文
一 被告三重県知事が原告松葉謙三に対して平成八年一一月一二日付けでなした、別紙文書目録1記載の文書のうち設計金額、工事価格、予定価格、入札書比較価格、制限価格、入札書比較価格の各金額欄を開示しないとの処分を取り消す。
二 被告三重県企業庁長が原告出口崇に対して平成八年一一月七日付けでなした、別紙文書目録2記載の文書のうち設計金額、工事価格、予定価格、入札書比較価格、制限価格、入札書比較価格の各金額欄を開示しないとの処分を取り消す。
三 訴訟費用は被告らの負担とする。
事実及び理由
第一 原告らの請求
主文同旨
第二 事案の概要
本件は、原告松葉謙三が被告三重県知事に対し、原告出口崇が被告三重県企業庁長に対し、それぞれ三重県情報公開条例に基づいて、別紙文書目録記載の入札予定価格調書の開示を請求したところ、被告らが予定価格等の金額欄を非開示とする本件処分をしたので、原告らがその取り消しを求めた訴訟である。
一 前提となる事実
1 当事者
(一) 原告松葉謙三(以下「原告松葉」という)は三重県内の肩書地内に居住しているものであり、原告出口崇(以下「原告出口」という)は本件処分当時、三重県津市内に法律事務所を開設していたものである。
(二) 被告らは、三重県知事あるいは三重県企業庁長(地方公営企業管理者)として、三重県情報公開条例(以下「本件条例」という)二条一項の実施機関にあたるものである。
2 本件処分の存在
(一) 原告松葉は、被告三重県知事(以下「被告知事」という)に対し、平成八年一〇月二九日付けで、文書目録1記載の公文書の開示請求書を提出した。これに対し、被告知事は、平成八年一一月一二日、右公文書のうち、設計金額・工事価格・予定価格・入札書比較価格・制限価格・入札書比較価格の各金額欄については、本件条例八条五号に該当するとして開示せず、その余の部分を開示する旨の部分開示決定を行い、その旨原告松葉に通知した。
(二) 原告出口は、被告三重県企業庁長(以下「被告企業庁長」という)に対し、平成八年一〇月二九日付けで、文書目録2記載の公文書の開示請求書を提出した。これに対し、被告企業庁長は、平成八年一一月七日、右公文書のうち、設計金額・工事価格・予定価格・入札書比較価格・制限価格・入札書比較価格の各金額欄については、本件条例八条五号に該当するとして開示せず、その余の部分を開示する旨の部分開示決定を行い、その旨原告出口に通知した。
3 本件条例
本件条例八条は、「実施機関は、請求に係る公文書に次の各号のいずれかに該当する情報が記録されているときは、当該公文書を開示しないことができる」とし、同条五号は、「検査、監査、取締り、入札、試験、交渉、渉外、争訟等の事務事業に関する情報であって、開示することにより、当該又は将来の同種の事務事業の公正又は適正な執行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」と規定している。
(以上の事実は、当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨より認めることができる)。
二 被告らの主張
1 本案前の主張
本訴は、原告松葉の被告知事に対する処分取消請求と、原告出口の被告企業庁長に対する処分取消請求を併合して提起されたものである。しかし、行政訴訟において数個の請求を併合提起するためには、行政事件訴訟法一六条(客観的併合)、一七条(主観的併合)の要件を満たす必要があるところ、本訴はそのいずれにも該当しない。つまり、右二つの請求は、事実関係も異なり何らの関連性もない。よって、本訴は不適法な訴訟であり、却下されるべきである。
2 本案についての主張
被告らが、本件処分で非開示とした設計金額、工事価格、予定価格、入札書比較価格、制限価格、入札書比較価格(以下「予定価格等」という)は、本件条例八条五号にいう、「開示することにより、当該又は将来の同種の事務事業の公正又は適正な執行に著しい支障を生ずるおそれがある」情報に該当するものである。よって、これを非開示とした本件処分は適法である。
(一) 各価格の意義
設計金額とは、発注者側が、最も妥当性があると考えられる標準的な施工方法を想定し、仕様書、設計書等に示された契約内容に基づいて、標準的な業者が施行する場合に必要と思われる適正な費用を算出して積算された金額のことである。設計金額の積算は、各種単価の決定、直接工事費の積算、工期の決定、共通仮設費の積算、現場管理費の積算、一般管理費等の積算をして合計し、これに消費税相当額を加算するというプロセスを経てなされる。工事価格は消費税相当額を加算する前の金額のことである。
予定価格とは、工事の請負にかかる競争入札の落札金額を決定するための基準となり、実質的に契約予定金額の上限としての性質を有する金額である。予定価格は、設計金額に基づき、契約担当者が一定の裁量的判断のもとに決定する。入札書比較価格は予定価格から消費税相当額を引いた金額のことである。
制限価格とは、工事又は製造の請負の契約にかかる入札について、技術上常識で考えられないような低価格での落札による契約不履行という事態を防止し、工事等の品質や安全性等当該契約の内容に適合した履行を確保するための価格であり、制限価格を下回る価格で入札したものは失格となる。制限価格は、予定価格を基準にして、その三分の二以上、五分の四以下の範囲内で、裁量的に定めることになっている。入札書比較価格は制限価格から消費税相当額を引いた金額のことである。
(二) 予定価格の事前公表の弊害
予定価格を定めるメリットは、歳出予算等を超える契約の執行を防止し、不当不正な価格による契約を防止に資することにあり、その事前公表は、三重県会計規則六五条、三重県企業庁会計規程二〇二条により禁止されている。これは、予定価格が事前公表されれば、①予定価格と同額に落札価格が設定されるようになる可能性があり、競争を通じて、納税者の利益を最大限に実現するという競争契約制度を機能させなくなるおそれがあること、②業者の見積の努力のインセンティブを失わせ、予定価格直下への入札価格の集中をもたらすおそれがあることを理由とするものである。
(三) 予定価格等の事後公表の弊害
これに対し、予定価格等の事後公表を禁じた直接の法規は存在しないが、予定価格等を事後公表すれば、結局、入札参加業者は、その価格をもとに将来行われる同種工事の予定価格を類推することが可能になるから、予定価格を事前公表したのと同様の弊害が生じることになってしまう。また、制限価格についていえば、将来の制限価格の類推が可能になることにより、一部の業者による制限価格直上への意図的なダンピング受注の常態化といった弊害が生じてしまう。
つまり、過去に実施されたのと同種工事であれば、事前に開示される設計図書や仕様書等の内訳において、同種の機器や作業内容等が含まれている場合が多いと考えられるから、過去の工事における設計図書、仕様書等と将来行われる工事におけるそれとを比較検討し、設計内容の類似点・相違点等を基準に加減して積算していけば、予定価格等の推測がより正確に行えるようになるのである。
もっとも、公共工事の積算の仕方については公表されている部分もあるが、全ての数値が公刊物等によって公開されているわけではなく、公表されていない係数は多数あるから、業者が公刊物等で予定価格等を推測するには限界がある。もし予定価格等を公表すれば、公表しない場合に比較して類推の精度が増すことは間違いがないのである。
したがって、予定価格等を事後公表すれば、入札参加業者は、将来の工事についてその予定価格等の探索のみに熱中し、まじめに見積をする義務を怠ることになり、談合を誘発することにもなる。
また、仮に予定価格等を事後公表したとしても、それによって談合の事実を解明できるわけではない。予定価格が民間工事に比べて高額であることを検証できるわけでもない
三 原告らの反論
予定価格等は、本件条例八条五号にいう情報には該当せず、本件処分は非開示事由がないにもかかわらずなされた違法な処分である。
1 予定価格公表による弊害の不存在
(一) 予定価格等の事後公表が行われても、工事にはそれぞれ個性があるから、将来の同種工事における予定価格等を類推するには限度がある。すなわち、土木構造物や建築物には、同種のものであっても自然的条件及び社会的条件により工事に要する経費も大きく異なってくるという特徴があるうえ、工事に要する経費の積算は、各構造物の条件に照らして行われる個別性の強いものであり、しかも事前予測としての不確実性を免れないものである。加えて、そもそも原告らが公開を求めている予定価格調書は、平成七年及び平成五年にまで遡るものである。技術の開発・進歩の著しい工業界の現状からするならば、二年以上も前の予定価格等の公開が、今後に行われる工事の予定価格等を類推させるということは考えられない。
しかも、公共工事の積算については、その仕方はかなり公表されているため、業者は現在でも相当程度、予定価格等を予測することが可能である。実際、入札業者は、ほとんどの入札において予定価格の九九パーセント台で落札している実情にあるので、仮に事後的に予定価格等を公表しても、将来の工事の予定価格をこれ以上類推できるということはほとんどありえない。
(二) 入札の競争性の確保は、入札参加業者間の受注調整行為=談合を規制できるか否かの問題であって、予定価格等の公表とは直接関係がない。すなわち、入札参加者によって事前に受注調整が行われ、落札業者が決まっている場合には、それ以外の業者は指示された金額を入札するだけで、見積努力を行う余地がなくなる。これに対し、入札参加業者による事前の受注調整がない場合には、各業者が独自の積算に基づき、真剣な見積努力を行うはずであり、予定価格等の公表によって業者独自の見積努力が失われることはあり得ない。
2 予定価格公表のメリット
(一) 現在の入札制度では談合が蔓延しているが、落札価格と予定価格がともに公表され、その結果、落札価格が予定価格に近接した価格であることが判明すれば、予定価格の漏洩及び入札業者間の談合が強く推測される。このような事態が明らかになれば、談合に加わった業者を排除したうえで再入札を実現することも可能になるし、業者としても談合をしにくくなる。県民が談合の有無を検証することもでき、談合を防止するための対策に寄与するはずである。この意味において、予定価格の事後公表は、入札の競争性を回復し、落札価格を適正な価格まで引き下げることを可能にするのである。
(二) 最近は、発注官庁の積算能力低下に伴い、予定価格の積算は業者依存で行われているのが現状であり、予定価格が工事価格の高額化を防止するという意味は失われつつある。業者依存の積算による予定価格の高額化を改善し、公共工事における公費の浪費を防止するためには、少なくとも入札後に予定価格を公表し、通常の積算価格との比較を通じて、積算が適正に行われているかどうかを検証できるようにする必要がある。
(三) 制限価格が高すぎたために、安い入札を排除することとなり、本来なら安くできるのに、高い価格で落札させてしまうこともある。従って、このような高すぎる制限価格を県民がチェックするためにも、制限価格を事後公表することが必要である。
3 予定価格等の事後公表をめぐる動き
予定価格等を公表すべきであるとする世論は高まっており、政府は、平成一〇年度から予定価格を事後的に公表する方針を固めている。政府の方針転換の理由とするところは、原告らの主張と全く同趣旨のものである。このような事情は、本日現在のみならず、原告らが本件開示請求をした時点においても全く変わるところはなかったのである。
四 争点
1 本件訴えの適法性
2 過去の予定価格調書の設計金額、工事価格、予定価格、入札書比較価格、制限価格、入札書比較価格が本件条例八条五号に該当するか。
第三 争点に対する判断
一 本件訴えの適法性
本件訴えは、原告松葉の被告知事に対する処分取消請求に係る訴えと、原告出口の被告企業庁長に対する処分取消請求に係る訴えを併合して提起されたものである。被告らは、右各訴えは併合提起の要件を満たさない訴えであって不適法であるから、却下されるべきであると主張する。
そこで検討するに、行政事件訴訟法(以下「行訴法」という)一七条によれば、請求の主観的併合は、併合される請求が取消請求と行訴法一三条にいう関連請求の関係にある場合にのみ許されるものである。これに対し、原告松葉の請求と原告出口の請求は、同種の法的争点を含むものではあるが、処分相互に具体的な関連性があるわけではなく、行訴法一三条各号にいう関連請求に該当するとは解されない。すなわち、本件各訴えは、行訴法一七条の要件を欠くにもかかわらず、併合提起された訴えである。
この場合、併合提起の要件が欠けていることをもって、訴えを不適法として却下すべきかどうかについて考えるに、併合提起の要件を欠くことは、直ちに訴え提起の要件を欠くことにはつながらないから、併合提起の要件欠如のみをもって訴えを不適法として却下することはできないといわざるをえない。併合提起の要件を欠く訴えは、それぞれ独立の訴えとして扱われることになるが、各訴えが独立の訴えとしての要件を備えている限りは、これを適法な訴えと解するのが相当である。そして、これを本件について検討するに、本件各訴えについては、独立の訴えとして要求される手数料が既に納付されており、他に独立の訴えとして必要な訴訟要件に欠けることを認めるに足りる証拠もない。以上によれば、本件各訴えは適法というべきであって、被告らの本案前の主張は採用することができない。
二 過去の予定価格調書の設計金額、工事価格、予定価格、入札書比較価格、制限価格、入札書比較価格が本件条例八条五号に該当するか。
1 乙二号証、三号証及び弁論の全趣旨によれば、予定価格調書の作成及び記載内容については、以下の事実が認められる。
(一) 予定価格調書とは、発注者が工事契約の入札に先立って作成する書面であり、本件開示請求の対象となった調書には、工事番号、工事名、工事場所、設計金額、工事価格、予定価格、入札書比較価格、制限価格、入札書比較価格が記載されている。設計金額は工事価格に、予定価格は入札書比較価格に、制限価格は入札書比較価格にそれぞれ消費税相当額を加えた金額である。予定価格調書は、作成されると封書され、開札の際に開札場所に置かれる(三重県会計規則六五条、三重県企業庁会計規程二〇二条)。
(二) 設計金額とは、発注者側の設計・積算担当者が、もっとも妥当性があると考えられる標準的な施行方法を想定し、仕様書、設計書等に示された契約内容に基づいて、標準的な業者が施行する場合に必要と思われる適正な費用を予め推測し算出した金額である。設計金額の積算は、各種単価の決定、直接工事費の積算、工期の決定、共通仮設費の積算、現場管理費の積算、一般管理費等の積算をして合計し、これに消費税相当額を加算するというプロセスを経て行われる。右積算は、公表されている土木請負工事工事費積算要領を用い、建設物価版や土木工事標準歩掛のような公表されている資料及び三重県が地域特性を考慮して独自に定めた項目により構成されている資料(単価表や歩掛表等)に基づいてなされる。このうち、直接工事費を積算する際の歩掛の数値や、共通仮設費・現場管理費・一般管理費等の算定に用いられる率分等には、公表されていないパラメーター等も含まれている。
(三) 予定価格とは、普通地方公共団体が契約を締結する場合にあらかじめ作成する契約価格の基準となる価格のことである。普通地方公共団体は、競争入札に付する場合においては、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって申込みをした者を契約の相手方とすること(地方自治法二三四条三項)とされているから、予定価格は実質的に契約予定金額の上限としての性質を有している。予定価格は、設計金額を基礎として、契約担当者の裁量的判断の下に金額が決定される。設計金額に対して予定価格がどのような比率・金額をもって設定されるかという基準は、公表されていない。
(四) 制限価格とは、それを下回る金額で入札した者が失格になる限度の金額のことであり、技術上常識で考えられないような低価格での落札による契約不履行という事態を防止し、工事等の品質や安全性等当該契約の内容に適合した履行を確保するための制度である(地方自治法二三四条三項但書、同法施行令一六七条の一〇第二項)。三重県においては、制限価格は、予定価格を基準として、その三分の二以上、五分の四以下の範囲内で定めることになっている(三重県会計規則六七条、三重県企業庁規程二〇四条)。予定価格に対して制限価格がいくらに設定されるのかは、右の範囲内で裁量的に決められている。
2 そこで、右認定事実をもとに、設計金額、工事価格、予定価格、入札書比較価格、制限価格、入札書比較価格が本件条例八条五号に定める非開示事由に該当するか否かについて検討する。なお、前記1認定によれば、これらの価格は相互に密接に関連しているものであって、被告らが主張する各価格の非開示事由も趣旨を同じくするものであるから、本件条例八条五号該当性については合わせて判断することとする。
(一) 被告らは、予定価格等を事後公表すれば、予定価格等を事前公表した場合と同様の弊害が発生し、三重県の入札事務の公正又は適正な執行に著しい支障が生じると主張する。なるほど、入札前に予定価格等が公表されれば、入札参加業者が予定価格に極めて近接した価格で工事を落札することを目指して、互いに談合を行う可能性を生むことになるのであり、そうなれば、入札事務の公正又は適正な執行に支障を生ずるおそれがあることは否定しえないところである。
(二) そこで次に、予定価格等を事後公表することにより、事前公表と同様の弊害が生ずるかどうかについて検討するに、被告らは、予定価格等を事後公表すれば、設計図書や仕様書を照らし合わせることにより、将来の同種工事における予定価格や制限価格を類推することが可能になってしまうと主張する。
しかし、地方公共団体が行う工事は、様々な種類のものがあるうえ、同種の工事であっても、各工事の構造、仕様、材質、時期的・地域的条件など各個別の特殊性があるものであって、過去の予定価格等から将来の予定価格等を類推することには一定の限界がある。また、予定価格等を算定する際に基礎となる数値も、物価の変動、技術の進歩などにより日々変化しうるものであるから、過去の予定価格等が、将来の予定価格等の類推にどの程度役立ちうるのか明らかではない。さらに、現在でも公共工事の積算の仕方はかなりの部分が公開されているので、入札参加業者はこのような情報をもとに予定価格等をある程度推測することができるのであるが、予定価格等を事後公表することによって、その推測の精度にどの程度の差異が生じうるのかも不明である。したがって、予定価格等を事後公表したからといって、将来の同種工事における予定価格や制限価格を類推することが必ずしも可能になるわけではない。
むしろ、予定価格を事後公表すれば、県民は予定価格と実際の落札価格とを比較し、あるいは予定価格と民間工事価格とを比較することによって、競争入札制度が公正かつ適正に機能しているかどうか検証することができるようになるのであり、このような検証の手段が定着すれば、結果として談合を事前に抑止する効果も期待しうると考えられる。
さらに、予定価格と設計金額及び制限価格との関係について付言するに、予定価格が公開されれば、これに連動する設計金額及び制限価格はほぼ推測がつくわけであるから、設計金額又は制限価格のみをあえて非公開にする根拠に乏しい。
以上によれば、予定価格等を事後公表することによって、将来の予定価格等を推測する精度に全く影響がないとはいえないにしても、事前公表と同様の弊害が生じるとは考えられず、これにより、三重県の入札事務の公正又は適正な執行に著しい支障が生ずることを認めるに足りる証拠はないというべきである。
(三) したがって、設計金額、工事価格、予定価格、入札書比較価格、制限価格、入札書比較価格は本件条例八条五号に該当せず、これらの各金額欄を非開示とした被告らの処分はいずれも違法であるというべきである。
三 以上によれば、原告らの請求はいずれも理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官山川悦男 裁判官新堀亮一 裁判官渡邉千恵子)
別紙<省略>